ジプシールンバって何?【5】アート or エンターテイメント?

乱暴なな言い方をすれば「フラメンコはアート」であり、「ジプシールンバはエンターテインメント」と捉えてよいのではないでしょうか。
両者の決定的な違いがコンパス(拍の定型)、ギターの演奏パターンの違いにあるということは述べたし、音楽の性質も全く異質のものであることも明白です。
更に見方を変えてみると、これらの違い以外にそれぞれのアーティスト、ミュージシャンのライブ、演奏の場において決定的に違うものがあります。
それは客席の風景です。
フラメンコの演奏される場では聴衆は「鑑賞する」、ジプシールンバの演奏される場では聴衆は「楽しむ」、ということに徹するということです。

フラメンコのライブではもちろんハレオ(掛け声)、パルマ(手拍子)が客席から飛ぶこともあります。が、しかし、よほどの通の人で自信のある人で無い限りは演奏者達に向けてハレオを発したり、一緒にパルマを打つということはできないでしょう。
下手にパルマを打たれるとコンパスが乱れ、意味の無いハレオは演奏者のモチベーションや曲の流れを惑わせてしまいます。
演奏者達も、そんな余計なことをされるよりも自分達のパフォーマンスをじっくり見てもらって、ドゥエンデ、コラソンを感じ取って欲しいはずです。

フラメンコのショーにおいて、観客は腰を落ち着けて鑑賞し、堪能するのです。このスタイルはエンターテインメントというよりはアートと言えますね。

Tablao Flamenco Los Gallos VO01 – Ana Morales – Alegrias

タブラオでのフラメンコショー。観客の入り込む余地なし・・・。

対してジプシールンバでは観客は、2拍子のシンプルでありながら非常に力強いリズムに同化し、歌い、踊り、楽しみます。
歓声(ハレオ)、手拍子(パルマ)は演奏者のみならず、観客からも飛び交います。
観客は演奏者達とともに、とことん楽しむ。このスタイルはアートというよりは、まさしくエンターテインメントです。

GRAND STUDIO RTL – VOS PLUS BELLES ANNEES – CHICO ET LES GYPSIES

ラジオ番組主催のライブにおけるチコジプの演奏。観客は最初から手拍子、最後は立ち上がってみんなでダンス。

もちろん、フラメンコ、ジプシールンバともに上記のような例には当てはまらない例外もありますが、各々の演奏の場に自らの身を置いてみれば分かることと思います。
良し悪しの問題ではないし、優劣の話でもありません。

出どころは同じで、限りなく似ているように思えても、ジプシールンバはフラメンコとは全く異なる音楽なのです。

これまでフラメンコとジプシールンバの違い、それぞれの性質について述べてきましたが、以下のエピソードが全てを物語っています。

世界的フラメンコギタリストPaco de Luciaが、とあるインタビューで尋ねられました。 「Gipsy Kingsの音楽についてどう思うか?」と。
Paco曰く「彼らはとても良い音楽を演奏しているし、個人的にも気に入っている。しかしフラメンコではない。」
Gipsy KingsのドキュメンタリービデオでのTonino Baliardoがフラメンコについて語る一コマ。(ギターでフラメンコのブレリアを弾きながら)「フラメンコはコンパスだ。フラメンコはコンパスが全てなんだ。」と。

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