ある雑誌の企画でインタビュー形式の記事を書いたことがあります。
せっかくなのでここでも紹介したいと思います。(Luis)
今現在も一家親戚一同でまとまってトレーラーやキャンピングカーなどで南フランスやスペイン北部あたりを放浪し、移動生活を続けるジプシーたちがいます。その数こそ減ったものの、いまだにこのような自由な生活を送る彼等に、ある種のあこがれに近い感情を抱いています。彼等は音楽を生業としていくつもの場所を転々とするわけですが、時には音楽家として歓迎され、時にはならず者として迫害され、「自由」にはつきものの不安定さを余儀無くされています。
一概には言えないことですが、日本人は安定を望むあまりに自由を失いつつあるのではと思います。安定を得た結果、お金や地位や権力など形の上での自由度は増すものの、心の自由が失われて来ているように思えます。
常にファミリーや仲間がいて、楽器があって、音楽があって、楽しむ時は余計なことを考えずにとにかく楽しむ・・・。言葉でいうのは簡単だけど今の日本ではいろいろな制限があって実際は難しいですね。
でも、自然とともに風の向くまま気の向くまま日々を過ごすっていうことが本来の人間らしい生き方だと思うのです。
確かに自分達の住む日本は、ジプシー達の住むヨーロッパ各地の環境とはだいぶ違っているため、ライフスタイルを真似るというのは無理があるかもしれません。身の回りのことや生活全てを丸々ジプシースタイルにしてしまうと日本では無法者扱いされてしまいますので、僕の場合、音楽を演奏する時やその仲間といる時はとにかく「楽しむ」ということを第一条件としています。せめて、気持ちやメンタル面だけでもジプシースタイルにしようという考えです。
バンド活動している時、あるイベントでペルー人の歌い手と知り合いになりました。みんなが知っている歌に抑揚をつけて、決められた拍数等関係なく自由なスタイルで歌う彼の姿に興味を覚えました。彼に「職業は何か?」と問うとすぐに「旅人だ」という言葉が返って来ました。その率直さにまたまた興味が湧きましたが、彼はこう続けました。「人生には旅が必要だ。旅をしていると余計なことを考えなくて済む。昨日の失敗も明日の心配も関係ない。大事なのは『今』なんだよ。」と。
この彼の姿勢に自分を照らし合わせてみました。考えてみると余計な心配事や悩みが多いことにふと気付きました。
誰にでも悩みは少なからずあると思いますが、そのことばかりに捕われていては「自分」を出し切れずに損なことが増えるだけだと感じるようになりました。
細かいことをいちいち気にせず、やりたいことを精一杯やる、楽しむ時はとにかく楽しむ。今、この瞬間が重要だと旅人の彼は教えてくれたのでしょうか。
また、僕は人生そのものが「旅」だと考えるようになりました。つまり極端な話、人間はみんな「旅人」なんだと思います。旅には出会いがあり、別れもある。一つ旅が終わるとそれがまた新しい旅の始まりであり、そういうことを繰り返し続け、齢を重ねて行くものなんだと思います。
僕は旅行が好きで海外などあちこち出かけるのですが、実際の旅先ではまさにドラマの連続です。出会う人もいれば離ればなれになる人もいる。新しい発見もあれば、悲劇に遭遇することもある。楽しくもあるしつらくもある。旅をしている時は毎日が新鮮で、ちょっとした出来事で運命が変わるという状況・・・、それはまさに人生そのものです。自分が身を委ねるその瞬間、その環境を深く味わうということが旅においても人生においても大事なんだなと感じることがあります。
憂いを抱きながら生きるより、喜びを感じながら生きる方が楽しい。刹那主義かもしれませんが、とにかく今という時間を大切に過ごし、あまり嫌なことは考えない。いろいろな境遇の人がいるけど、少なくとも自分自身はそういう気持ちを大事にして生きていきたいです。
Gipsy Groove(以下GG)での活動は自分を表現する手段だと思っています。
もともと音楽が好きで様々なジャンルの音楽を聴きましたが、はじめてGipsy Kingsの音楽を聴いた時、心の中でピンと何かが弾けるような感覚を覚えました。だれしもそう言う感覚を味わうことはあるかもしれませんが、僕にとってはジプシールンバというジャンルの音楽でした。
ジプシールンバの根底にはスペイン発祥のフラメンコがあります。僕自身も一時期フラメンコ自体にはまっていました。フラメンコの多種多様で複雑なリズム形式を把握し、その中で表現するのは非常にスリリングで魅力的なものでした。ただ、そういう「決められたリズム形式」というものがどうも日本人には難しいものだと思います。何か形にはめられているような気がして、日本人がストレートに受け入れることは困難だと思います。
もっと単純に分かりやすくフラメンコの魂を表現できないものか・・・?その結果巡り合ったのがジプシールンバだったのです。南スペインで歌われるフラメンコ曲も取り入れられたりしますが、基本的には南フランスもしくは北スペインのジプシーたちが産み出した2拍子系の陽気でどこか哀愁のある歌が独自に発展してこのジャンルが形成されました。
これなら日本人にも分かりやすいし、誰にでも受け入れられると思いましたが、意外にもまだ日本ではそれほど認知されていないジャンルでした。僕やバンドの関係者はジプシールンバはフラメンコと似て非なるものと考えていますが、日本のメディアでは「多少違うが似たようなもの」とみなされているようです。
GGの活動を通して、このジャンルをもっと日本に普及させ、多くの人にこの音楽を知ってもらうことがGGの役割であり、自分の望むところでもあります。